前回のあらすじ
・"俺"、さやかちゃんに誕生日プレゼントを贈る。渡したのは色違いのリストバンド。
・こっそりお揃いにしたものの、それすらもさやかちゃんに見抜かれる
さて、前回は僕がさやかちゃんにプレゼントを渡して終わりました。
ちなみにさやかちゃんの誕生日は9月中頃、僕の誕生日は12月12日です。そうです。遠いわけではないのです。
渡したらワンチャン冬にお返しでもらえるかなと思いながら渡していました。
そして何やかんやありながら秋を迎え、僕とさやかちゃんの関係は特に変わりもなく冬の足音が聞こえてくるようになりました。
制服はとっくの昔に冬服となり、風が吹きつける帰り道も辛いものになってきました。一方で僕とさやかちゃんとの関係性には一向に変化がありません。
しかし、僕の内心は日に日に冷え込む季節とは真逆のようにじっとりと熱くなっていました。
さやかちゃんは僕の誕生日を覚えていてくれているのか?
僕に何か渡してくれるのか?
そもそもこうしてやきもきしてること自体が見透かされているのではないか?
とても気が気ではありませんでした。成績もこの時期にはかなり落ちてました。単純に勉強するのをやめたのもありますが、今振り返るとさやかちゃんに自分のリソースを持ってかれていたような気もします。
そして運命の12月12日。水曜日でした。
僕は13歳になりました。ちなみにこのブログを書いている今は23歳です。
この日は朝からソワッソワしてました。誕生日を覚えてもらっていた何人かの友達には祝ってもらえましたが、肝心のさやかちゃんからは特に何もありませんでした。
う、嘘だよな…???
オイさやかちゃん!!!!!!!!!!!!!!
忘れちまったのか…………??????
俺の誕生日を、忘れて、しまったのか………????????
3時間目の放課(休み時間)が終わるころには、さやかちゃんに誕生日を祝ってもらえる目が焼失したことを悟り、完全に意気消沈しました。
勝手に期待してただけなのに。勝手に誕生日を覚えて、勝手に渡して、勝手に覚えてもらっていると感じただけなのに。
愚かです。今見返してもあまりにも傲慢で愚か。
沈んだ気分で一日を終え、帰路に就こうとしていたその時でした。
何と今日は部活早上がりのはずのさやかちゃんが待っていました。
アッッッッッツ!!!!!!!!!!!
と冬の空に大きな声で叫びたい気持ちを何とか嚙み砕き、今日早上がりじゃなかったのwなどと軽口を叩いていましたが、口角は一気に天まで上がったことを覚えています。
自転車置き場の影、あまり人の寄り付かない場所まで着くとこっちを振り向き、
はいこれ。誕生日おめでとう。
と照れの混じった表情で渡された小さな茶色い小袋。さやかちゃんに聞いて中を見てみると青い袋が見えました。アニメイトの袋です。
さらに開けてみるとそこには銀魂のトレーディングしおりと、青を基調にしたおしゃれなメモ帳が入っていました。
初めて好きな人からもらった誕生日プレゼントです。嬉しくないわけがありません。
もう抑えられなくなったニヤニヤも隠すことなく帰路に就いた僕とさやかちゃん。
話してる内容はお互いに渡したプレゼントを選んだ理由から翌年のクラスの話まで。
さやかちゃんはそこまでカッコイイ系じゃなくて使ってもらえるかはわからないから、無難に使えそうな銀魂のしおりを入れたけど…と照れていましたが、僕はメモ帳が一番うれしかったです。それから半年近く大事に大事に使い、全てのページを書き切りました。
そして、新年が訪れるとすぐにやってくるクラス替えの話。お互い器用に友達を作れるタイプではないので、お互い似たような不安を抱えていました。
「来年も一緒のクラスで、こうやって中3について話せたらいいよね」
なんて会話をして別れたのを覚えています。
しかし、僕の通っていた中学校は当時全6クラス、単純な確率で言ったら絶望的でした。
案の定、確率の壁を越えることはありませんでした。
さやかちゃんと僕が中3のクラスについて語り合うことはついにありませんでした。
この冬が、結果的にさやかちゃんと僕が共に過ごした最後の冬になります。
次回さやかちゃんと"俺"第7話「Re:春風」
お楽しみに!