前回のあらすじ
・ついに告白。声がデカかったらしい。
あれから10年 さやかちゃんにフラれる直前にハマったまどマギもついに最新作の上映時期が発表されました
大勝負が終わり、家に帰った。
体育祭終わりだったのもあったが、一気に疲れが押し寄せた。
そして、泥のように寝た。
一夜明けた。大勝負が終わり、また僕の日常が始まる。
さて、さやかちゃんは「返事は明日」と言っていたが、いつどんな形で返事を伝えてくれるんだろう。
どちらの結果であれ、直接伝えられたらさすがに頭おかしくなっちゃうな…と思いながら登校し、下駄箱を開けると一枚の紙切れがあった。
「ある」、そこに。同時に一気に鳥肌が立つのを感じた。
紙切れに見えたものはきれいに折りたたまれたルーズリーフだった。恐らくこの中に返事が書かれているのだろう。
怖かった、「これ」を開いてしまうのが怖かった。
さやかちゃんからの返事を手に握っているときに気付いた。今までが楽しかったのは自分が関係性を進展させようと踏み込まなかったからであって、自分が一歩踏み込んだせいで壊れてしまう薄いガラスのような関係の上で幸せを享受していることを理解していなかった。
何を読む前から沈んだ気持ちになっているのかと思うが、この紙に何が書かれているのか薄々察してはいた。
人気のない所へ移動し、ゆっくりと紙を開ける。さやかちゃんらしく、丁寧に折り目が付けられていて、手先が不器用な自分でも読み終わった後にもう一度折りたためるようになっていた。
結果から書くと、ガッツリフラれていた。
まだこの手紙を手元に残していれば名前などを隠したうえで現物を載せても良かったけど、大学生の時にいい加減この思い出から脱しようと一念発起して捨ててしまったので記憶をたどっての要約になるが、高校生の時にはあの気持ちを忘れまいと悔しいことがあった時にはかならず読み返していたので、内容の正確性については信じてほしい。
余談ではあるが、四字熟語の臥薪嘗胆の由来も「復讐の誓いを忘れないために薪の上で眠り、苦い胆を舐めることで悔しさを忘れなくした」という逸話から来ているらしく、そういう意味では悔しさを忘れないためにさやかちゃんからの手紙を定期的に読み返していた自分は、現代の日本でキモスギ臥薪嘗胆をしていたことになる。
小話はさておき、さやかちゃんの手紙にはこう書いてあった。
・まずはありがとう、突然すぎてびっくりした
・その日に答えを出せず申し訳ない
・ゆーみんとは付き合えない、ゆーみんは良い友達だから無理やり付き合うこともできはするがそれはお互いのためにならない
・付き合えはしないが、ゆーみんのことは男子では一番の友達だと思っているからこれからも話をしたい、数少ないオタク仲間だし
・もちろん今すぐにとは言わないから、ゆーみんの中で整理付けたらまた話に来てほしい、待ってるから
多少なりとも美化が入ってるかもしれないが、大筋からは外してないと思う。
結構びっしり書かれていたが、内容はこれくらいしか覚えていない。
今見返しても本当にいい事が書かれているなあと思う。結論を端的に伝え、自分へのフォローまで的確にされている。
本当はキモすぎ!キモオタ死ね!鏡見てこいタコがとか書きたかったかもしれないのに、自分という爆弾を上手に処理しようとしていた。
本当にいい子だと思う。さやかちゃんはもうすぐ24歳になってる頃。幸せになっていることを切に願っている。
それからの自分はというと、ただひたすらに惰眠を貪っていた。
さやかちゃんには何となく話しかけられず、かと言ってあんだけ行けると思って告白した自分があまりにもダサくて周りに話すこともせず、ただひたすらアニメを観てまとめサイトを見て、Youtubeを見るという終わりの生活をしていた。この後さらに終わった生活を送るようになるのだが、この時はまだ知らない。
小さな自意識が邪魔をしてさやかちゃんとの関係修復もできず、さやかちゃんにフラれる直前に見始めたアニメ、魔法少女まどか☆マギカの「美樹さやか」を見るたびにさやかちゃんのことを思い出して気分が沈む日々。叛逆の物語も初見時は楽しめたが3回目くらいからは美樹さやかが口を開くたびに頭がおかしくなりそうになっていた。
この頃に、本格的にインターネットで他人との交流を始めた。
場所を変え、連絡ツールを変え、今でもFFでいてくれるオタクともこの頃に出会った。当時の会話では「彼女がいる」と言っていたが、あれはフラれたはずのさやかちゃんの事を言っていた。デートの話も必死に捏造していた。このブログを読んでいるかはわからないけど、この場を借りて謝罪しようと思う。申し訳ない。
冬にもなると、さやかちゃんとの共通の友人が突然会話のなくなった自分たちを心配して仲を取り持とうとしてきた。
自分はそれすらも突っぱねてきた。何か、今更話す気にもならなかった。今思えば強情だったなあと思う。
全てを突っぱね続けた。いつしか、周りからさやかちゃんについての話を聞かれなくなった。
そして、特に何のイベントも起こらずに年が明け、2014年に突入した。
もうさやかちゃんの事はなかったことにすると決めた。フラれる直前に魔法少女まどか☆マギカにハマってしまい、しかもその中でも「さやか」という名前のキャラを好きになってしまったがために色々ぐちゃぐちゃになったりしていたが、もう何もかもを忘れようとした。
忘れようとしてのめり込んだのはインターネットだったが、それもただ時間を潰すのみで、充実感は何一つとして得られなかった。部活でも可もなく不可もなく…さやかちゃんにフラれてからというもの、満足しているとはとても言い難い生活を送っていた。
貴重な時間を浪費し続け、ただなアニメを観てネットに浸り、堕落していた中で迎えた中学3年生、後の人生を決定づけることになる一本のアニメと出会うことになる。
ラブライブ!2期
ラブライブ!との出会いはここだった。1期からにっこにっこにーのバズりによって存在自体は知っていたが、本編は見たことがなかった。
見たことないし3話まででも見てみるか…それが全ての始まりだった。
お、面白れぇ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!
真姫ちゃんかわいすぎワロタ!!!!!!!!!!!!!!!!!
今の"俺"の原型はこの頃に生まれたと思う。
ラブライブ!にハマり、さやかちゃんのことも吹っ切れた。それくらいラブライブ!が俺に与えたインパクトは大きかった。
それからはラブライブ!一色だった。アニメは当然リアタイした。それまでは睡眠を優先しアニメはほとんど録画視聴だったが、ラブライブ!はすべてリアタイした。
9話のスノハレ回も、12話のキラセン→僕今の流れも、13話のHappy Maker!→大変です~!の流れも、すべてリアタイで観てきた。
正直今では使い古されたThe・ラブライブ!のストーリー展開ではあるが、当時中学3年生になりたてだった自分には衝撃だった。
初めて自分のおこづかいで買ったCDはMusic S.T.A.R.T!!のアルバムと西木野真姫のソロアルバムだった。
それだけでは飽き足らず、中学生オタクにありがちな「筆箱をデコる」行為に走り出した。
一番痛かった。とても書けないくらいにはThe・痛いオタクの行動を繰り返していた。Twitterをやってなくて良かったし、後にラブライバーが悪のオタクの代名詞となる前で本当に良かった。
さやかちゃんもこの話はなぜか知っていたらしい。中3もクラス違うから話なんてする機会ないのになぜか俺がラブライブ!にハマったことは知っていたらしい。本当になんでなんだろう。
本当に今の"俺"の原型が作られ始めたのがこの辺だなあと思う。ラブライブ!は今でも地続きで好きなコンテンツだし、きっかけはさやかちゃんにフラれたことだと思うからさやかちゃんが"俺"の一部を形作ってると言っても良いと思う。
さて、話を当時の"俺"に戻そうと思う。
あれからも、ラブライブ!のオタクとしてひたすらオタ活に励んでいた。さやかちゃんのことなんてすっかり忘れていた。
ラブライブ!板にも入り浸った。SSも読み漁った。女性声優のラジオを聞きまくった。一番最初に聞いたのはのぞえりラジオガーデンだった。何度かメールを送ったりもした。受験生だというのに全く勉強をしなかったので、成績は当然上がらなかった。
そうしていつしか、卒業シーズンが近付いてきた。何人かの友達にさやかちゃんともう一度話しておかなくていいのかと言われたりした。
だけど、俺はそれもすっぱり断った。どうやら冬になってもさやかちゃんは待っていたらしいが、俺はついに話しに行かなかった。
そして、さやかちゃんと"俺"の間には特に大きいイベントが一つも発生せず卒業した。
卒業した当時は後悔していなかった。お互いにこれからいろいろな出会いがあるんだからいいだろと思っていた。それは間違ってないと思う。自分も実際に高校、そして大学で数多の出会いと別れを経験した。さやかちゃんとのこともその内のひとつでしかない。
実は、卒業後にもさやかちゃんと話すチャンスは2回だけあった。
1回目はいつかは忘れたが高校生の夏、当時名古屋の地下街にあったフィギュアやプラモデルを売っていた小さなオタクショップで会った。間違いなくさやかちゃんだったし、向こうも明らかに気付いている風だったが、俺がイヤホンで気付かないふりをして逃げた。
2回目は成人式の日。わざわざ当時の友達が気遣ってくれたのか2人で話すチャンスができた。
それでも俺は話さなかった。当時は「終わったことだし、お互いもう大人だから」とクールぶって元気そうにしてるならそれでいいとしたが、実際はイキっていただけだった。この時に変な意地を張らずに笑い話としていれば、今こんなブログを10ヶ月もかけて書き上げていない。
この経験があるからこそ、俺は成人式のシーズンになると「少しでも話したい人がいたら積極的に話しかけろ」とツイートするようにしている。
何回でも言うけど成人式で声かけたい子がいるなら絶対声かけた方が良い、そうじゃないと未だにウダウダ言ってる俺みたいなバケモノが生まれるぞ
— ゆーみん (@sansation613) 2023年1月8日
これ成人式当時の俺だけど仮にこうなってもトゲが残ってる人は絶対に探すんだ、俺との約束だぞ https://t.co/UImhfioSw4
— ゆーみん (@sansation613) 2023年1月8日
もう俺と同じ経験を誰にもしてほしくないので、まだしばらくはツイートを続けようと思う。
Twitterのアカウントを作ってから5年ほどはさやかちゃんの話をしないでいたし、別に話すほどの事でもないなあと思っていた。
でも、一度ぽつりとつぶやいてみたらそこそこふぁぼがついた。
それからはこの記事を読んでいる人ならお分かりだろう。承認欲求に負けさやかちゃんの話、あろうことか10年も前の話を擦り続け、果てはこんなブログで本格的にいいねを稼ぎ始めた。
さやかちゃんが今何をやっているかは全く知らない。ただ、幸せでいることを心から願う。
ひとつ希望を残すとしたら、さやかちゃんも何かしらのオタクでいてくれると嬉しいな。俺もまだまだオタク辞められそうにないから。
今までありがとう。さようなら。
さやかちゃんと"俺" 終
あとがき
最後は少し尻すぼみになっちゃったけど、さやかちゃんと"俺"で書きたいことは全て書き切りました。
今回で最終回だし、今後はさやかちゃんの話はあまりしたくないなあと思っています。
10年も前の人に縛られているのもいよいよダメだと思い、自分の中で過去を清算するために書き始めたさやかちゃんと"俺"も、思ったよりたくさんの人に読まれました。
出来には満足しています。書き切ってみると、憑き物が落ちたような気分です。
さや俺を書いている間、思いがけない方向から読んでる報告もされたし、初めて会う人にも「さやかちゃんと"俺"読んでます!」と言われることも何度かありました。本当にありがたいことだと思います。動物園の動物を見に来るような感覚でも、読んでくれた人は本当に感謝しています。本当にありがとうございました。
救いようのない人間の、どうしようもない過去の話をここまで読んでくださったのは自分の方からお礼をしないといけないのかもしれません。
本当にありがとうございました。気が向いたらでいいので、これからのゆみブロも読んでくれると嬉しいです。
ゆーみん @sansation613